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東京地方裁判所 昭和40年(モ)18856号 決定 1966年12月23日

申立人

更生会社サンウエーブ工業株式会社

管財人

児玉俊二郎

右代理人

藤林益三

中村勝美

被申立人

柴崎勝男

右代理人

桐生浪男

主文

更生会社サンウエーブ工業株式会社の被申立人に対する損害賠償請求権の額を、次のとおり査定する。

一  違法利益配当金分損害金八億九六二四万四三二三円ならびに

1内金九一一九万一四〇〇円に対する昭和三九年二月一四日から、

2内金一億六七四五万三七二二円に対する同年六月一三日から、

3内金一億六三六八万一三八六円に対する同年九月三〇日から、

4内金一億六五四九万一九八二円に対する同年一二月二日から、

5内金一〇〇二万二九七六円に対する昭和三八年二月二七日から、

6内金三〇七〇万九二六〇円に対する昭和三九年一〇月八日から、

7内金三三二三万七七七五円に対する同年一一月七日から、

8内金三五六七万〇八三九円に対する同年一二月一二日から、

9内金一億九八七八万四九八三円に対する同年一二月一七日から、

それぞれ支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員

二  違法支払役員賞与金分損害金三九九四万円ならびに

1内金二九六万円に対する昭和三七年一二月一六日から、

2内金四一二万円に対する昭和三八年七月六日から、

3内金五五七万円に対する同年七月一一日から、

4内金一〇〇〇万円に対する同年一二月一一日から、

5内金一〇〇〇万円に対する昭和三九年七月一二日から、

6内金一八五万円に対する昭和三七年八月一六日から、

7内金一二七万円に対する昭和三八年四月二七日から、

8内金一七二万円に対する同年一〇月二九日から、

9内金二四五万円に対する昭和三九年四月二三日から、

それぞれ支払ずみにいたるまで年五分の割合による金員

理由

第一  申立人の本件申立の趣旨および理由≪省略≫

第二  当裁判所の判断

一  当裁判所に顕著な事実ならびに申立人、被申立人各審尋の結果および申立人提出の疎明によつて、一応認められる事実は、次のとおりである。

1  サンウエーブ工業株式会社(以下更生会社という。)は、昭和三九年一二月二四日当裁判所において更生手続開始決定をうけ、同時に申立人はその管財人に選任され、現在更生手続進行中である。

更生会社は、もとアポロ工業株式会社と称し、昭和三九年五月一日サンウエーブ工業株式会社(以下旧サンウエーブという。)を吸収合併したうえ、サンウエーブ工業株式会社と商号を変更したものである。

そして、被申立人は、昭和二九年一一月一〇日から右合併にいたるまで、旧サンウエーブの代表取締役であり、かつ、昭和三四年一月九日から更生手続開始にいたるまで、更生会社の代表取締役であり、その後もその地位にあつたが、昭和四一年三月三一日更生計画認可の決定の時に解任された。

2  被申立人は、旧サンウエーブおよび更生会社の代表取締役として、旧サンウエーブについてはその第一五期(昭和三七年六月期)から第一八期(昭和三九年二月期)まで、更生会社についてはその第二八期(昭和三七年六月期)から第三二期(昭和三九年八月期)までの各営業期に関し、いずれも商法第二九〇条第一項の規定により、利益配当をしえない状況にあつたにもかかわらず、別紙準備書面添付第一表≪省略≫(C)「税引前当期公表利益金」例記載の利益があつたとして、株主に対し、同表(E)「配当率」欄記載の割合による利益配当をすべき議案を、それぞれの期の定時株主総会に提出した。

しかして、各営業期に関する株主総会は、右提案どおり承認決議をし、旧サンウエーブおよび更生会社は、それぞれ右決議に従い、株主に対して、同表(B)「配当総額」欄記載の利益配当をした結果、同表(H)「差引支払額」欄記載の金員合計金八億九六二四万四三二三円が、申立の趣旨第一項記載の各期日の前日までに、旧サンウエーブおよび更生会社から、右両会社を除く各株主に対する配当金および源泉徴収所得税として支出され、両会社は同額の損害を受けた。

3  被申立人は、旧サンウエーブおよび更生会社につき前記2記載の各営業期において、利益がないのにかかわらず、別紙準備書面添付第二表≪省略≫(B)「株主総会決定の役員賞与金」欄記載のとおり、役員賞与金支払の議案を、それぞれの期の定時株主総会に提出してその承認決議を得たうえ、同表(C)「支払日」欄記載の各期日に、同表(G)「査定申立額」欄記載の金額合計金三九九四万円(ただし、このうちには旧サンウエーブ第一六期において株主総会の決議の範囲を超えて支出された金一六五万円を含む。)を、役員賞与として支払い、両会社に同額の損害を与えた。

二  叙上認定の事実に徴すれば、被申立人は、更生会社に対し、商法第二六六条第一項第一号(役員賞与金のうち株主総会の決議を超えて支出された分については、同条項第五号)の規定により、

1  前記一2の事実にもとづき、別紙準備書面添付第一表(H)「差引支払額」欄の合計金八億九六二四万四三二三円および前記一2記載の各営業期における右「差引支払額」欄記載の金員に対する配当金支払最終日の翌日たる申立の趣旨第一項記載の各日から支払ずみにいたるまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、

2  前記一3の事実にもとづき、別紙準備書面添付第二表(G)「査定申立額」欄記載の金額の合計金三九九四万円および前記一2記載の各営業期(ただし、更生会社の第三二期を除く。)における右「査定申立額」欄記載の金員に対する同表(C)「支払日」欄記載の各日の翌日から支払ずみにいたるまで、民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある(商法第二六六条第一項第一号所定の配当額弁済義務および同第五号所定の損害賠償義務は、配当金支払の時もしくは損害発生の時に直ちに遅滞に陥るものと解するを相当とする。)。

三  よつて、申立人の本件損害賠償請求権査定申立は、すべて理由ありと認めて、主文のとおり決定する。(位野木益雄 西山俊彦 柴田保幸)

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